医学部合格応援団◇息子のための英文法演習ブログ

ロンドン単身赴任の米国公認会計士が、息子のために医学部受験向けに英語を解説しています。

東邦大学医学部の予想問題 ─ 経済ニュース記事の解説 2/3

Q2の空欄補充は、本文を読み解きながら見ていきます。予想問題本文はこちらです。

medicpress-harada.hatenablog.com 

ではまず前半から。

★Spring is traditionally the time / 春は伝統的に~する時期だ。

when people seek to change jobs, / 人々が転職先を探す

having collected their annual bonus / ボーナスを手に入れた後で

for the previous year./ 前年度分の

 

seek は「〜を探す、探求する」という動詞で、seek to~は「~する準備を始める」という言い方です。seek to change jobsで「仕事を変える準備をする」つまり「転職活動を始める」という意味となります。

having collectedは要注意!have collectedという現在完了形になっているという点に注目してください。

日本の一般企業では、年俸を16で割って2ヶ月分ずつのボーナスが年に 2度きちんと払われるケースがありますが、外資系は業績連動で年1回だけしか出ません。しかもボーナス発表前や支払い前に辞表を出した場合、前年度分のボーナスが帳消しにされるケースが結構あります。12月決算が多い海外では2月や3月にボーナス支払いがありますので、会社を辞めたくてもそれまで我慢して、入金を確認してから辞表を出すのです。ここでもfor the previous yearのボーナスをもらったのを受けて、職探しをするという文章になっています。

having collected以下を文章で書くとすると、as they have collected…となります。「すでに~をし終えたので」という言い方でhaveを入れるように問う問題もありますので、気をつけましょう。haveを入れて完了形にしておかないと、「~終了を受けて」という意味になりません。

 

★This year, / 今年は

(A-1) fluctuations in different sectors' employment demand / さまざまな業種で人手に対する需要が変動しており

are sending mixed messages / まちまちなメッセージを送っている。

to (B-1): potential recruits./ 職探しをする人々に

 

B-1に入る言葉は、「将来的な」「可能性のある」という意味のpotentialが正解です。

前に予想問題で麻薬カルフェンタニル関連の出題をした際、関連語のpotentが「強力な」という意味で出てきましたね。fluctuationsは昨日説明し、mixedもOECDの経済予測の記事で解説しました。2度目に見た時に「あれ、どういう意味だったっけ?」と思うのは、身についていない証拠です。問題まで戻って復習しましょう。悔しさから、今度こそ覚えるはずです。

potentとmixedはそれぞれ、以下のエントリーで確認してください。

medicpress-harada.hatenablog.com

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他の選択肢も見てみます。いずれも形容詞です。正解は赤で表示しました。

  1. progressive 「進歩的な」。名詞はprogress「進歩」。政治家や教育者が好む言葉です。
  2. potential 「将来的な」
  3. prosperous 「栄えている(状態の)」。動詞はprosperで「繁栄する」です。
  4. past 「過去の」。これはpotentialやfutureの反対の意味で出しました。

 

recruitは「職探しをしている人」という意味の名詞です。起業家を多く輩出している企業として有名な、あのリクルートと同じです。求職中の若者が着る就活スーツをリクルート・スーツと呼ぶようになって、もう数年たちますね。

今すでに仕事を探している求職者はcurrent recruitです。今ではなく将来的に職探しをする可能性のある人はpotential recruitです。recruitになる可能性のある人という意味です。求職者が何十万人もいますから、当然複数形になっています。

 

Rio Goh, / リオ・ゴウ氏は

managing director of Morgan McKinley China, said: / モルガン・マッキンリー中国支社長だが

"When economic growth slows down, /「景気が減速する時は

it is not (B-2) unusual / to以下は珍しくない

to see companies / 会社が~するのを見るのは

adopting a (A-2) cautious attitude. / 慎重な態度を取るのを

when it comes to hiring or reducing hands."/ 採用や従業員削減に関連して」

 

B-2の正解、not unusualというのは二重否定の言い方です。つまりusual「よくあることだ」と言っています。何が珍しくないかというと、会社がcautious attitudeをadoptすることですね。

adoptは「取り入れる」という動詞で、名詞adoptionになると養子縁組を指すこともあります。よその子供を家族に取り込むからです。

when it comes to~というのはイディオムで、「~に関連して」という言い方。comesを書かせる問題が出ることがありますので、覚えておいてください。

 

モーガン・マッキンリーは、国際的なヘッドハンティング会社です。本人たちはexecutive search firmやexecutive recruitment firmという呼び方を好むようですが。

同業大手にマイケル・ペイジやヘイズなど数社あり、私も何度か転職時にお世話になりました。エリートを外資系に売りつけ、成功報酬としてその年収の30%ほどをもらうという仕事です。優秀な人材はもらう給料の5倍は稼ぐといいますから、即戦力を確保するには、ヘッドハンターに3割の仲介料を払ってもおつりが来るのですね。社内で昇進しても年俸アップは100万円ぐらいな中、ヘッドハントされた先では500万アップとかざらにありますので、ヘッドハンターから電話を受ける側も心が動くわけです。

 

他の選択肢は、以下のような意味の形容詞でした。

  1. unreal 「信じられないような」
  2. unprofitable 「利益の出ない」
  3. unusual 「めったにない」
  4. unrealistic 「非現実的な」

いずれもunで始まり、後ろの形容詞を否定する意味となっています。

 

(A-3) Owing to cost cutting and operational consolidations, / 経費削減と業務の統合を受け

foreign banks started reducing (B-3) headcount in China and / 外資系銀行は中国と~で人員削減を始めた。

the wider Asia-Pacific region / より広範なアジア太平洋地区で

since the second quarter of 2016. / 2015年の第2四半期から

 

B-3の正解はheadcountです。昨日も書きましたが、これは文字通り頭数のことで「従業員数」という意味で頻繁に使われます。ここではreducing headcountと言い、その直前ではreducing handsを同じ意味で使っています。これまで何度か指摘した通り、英語では1つの記事で、わざと違う言い方変えて同じ物事を指すのが普通です。頭を切ったり手を切ったりというやり方で、人員削減をするのですね。

Asia-Pacificは縮めてAPACと書くことも多いです。読み方はエイパックです。

 

a quarterは4分の1という意味。a quarter past nineというと9時と4分の1過ぎですから、60x1/4=15、つまり9時15分のことです。

では9時45分は、なんと言いますか?a quarter to tenですね。10時まであと4分の1時間です。

 

その他の選択肢は、headで始まる名詞に揃えました。

  1. headset ヘッドフォンに近いですが通話できるマイクがついているやつです。
  2. head banging これはヘビメタバンドやそのファンがやる、頭を激しく振る盛り上げ方を指します。bangは「激しくぶつける」という意味の動詞です。宇宙の始まりビッグバンは、big bangと書きます。
  3. head band これは洗顔時に髪の毛をホールドする、ぶ厚めのヘアバンドのことです。
  4. headcount 「従業員数」

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big bangで画像検索すると、こういう物騒なものが出ます。

 

★In 2017, / 2017年には

these banks will remain cautious / こうした銀行は引き続き慎重な姿勢だろう。

about hiring. / 採用に関して

 

★Although Chinese banks are hiring more than their foreign (B-4) counterparts, / 中国の銀行は外資系の同業他社よりは多く採用しているものの

they have also felt the effect of / 彼ら(中国の銀行)も~の影響は感じている。

tough business conditions and / 厳しいビジネス環境と

lower (A-4) margins. / 利益率の低下を

 

B-4は 「相手方」「同等のもの」という意味の名詞、counterpartsが入ります。a counterpartyという言い方もあります。中国の複数の銀行に対して、それと同等の外資系のものと言っています。よって同業他社と訳しました。同業他社は複数ありますので、counterpartも複数形になっています。

 

その他の名詞は、以下のような意味でした。

  1. counterparts 「相方」
  2. casualties 「犠牲者」「死者数」。巻き添えを食う人のことは、特別にcollateral damageと呼びます。シュワちゃん主演の映画で、そういうタイトルのものがありました。
  3. consciousness 「意識がある状態」。元は形容詞consciousで、反義語の「無意識」はunconsciousです。よく似たつづりでconscientiousというのがありますが、こちらは「良心」を指す名詞です。後半のeにアクセントがあるので注意しましょう。
  4. counter-effects 「副作用」。これは医学部志望なら、外してはいけない単語ですね。

 

★So, some of them are (A-5) scaling back recruitment / これを受け、銀行によっては採用を手控えており

or even restructuring and making redundancies. / もしくは部署の建て直しやリストラを敢行しているケースもある。

 

Soが大文字で先頭に来ると、AccordinglyやThereforeと同義語の「そういうことだから」「こうした流れを受けて」という接続詞になります。

英語でrestructuringというと、「ストラクチャーをやり直す」と書く通り「業績改善のための事業見直し」といった意味です。

日本語でいうリストラに該当するのはredundancyの方で、これはいわゆる首切りを指します。make redundanciesで「馘首する」となります。似た言い方でlay offは、非熟練労働者などを自宅待機させて経費を削減することです。

次のB-5の答えdownsizingも、文字通り「サイズを縮小する」=「事業や部署を縮小する」という意味です。

 

★Employee (B-5) downsizing has already started / 従業員の削減はすでに始まっている。

in leading commercial banks in China. / 中国の主要な商業銀行で

 

その他の単語は

  1. coordinating 「コーディネートすること」
  2. downsizing 「削減」
  3. upgrading 「アップグレードすること」
  4. fascinating 「(これのみ形容詞)胸躍るような」

という意味でした。

 

私は、大学院留学や投資銀行勤務で、オーストラリアに6年ほど住んでいました。オーストラリアはもう四半世紀も経済成長が続いている資源国ですが、経済が鉄鉱石や羊毛の輸出頼みなので、「アメリカがくしゃみをしたら日本が風邪を引き、オーストラリアが寝込む」と言われていました。

それが近年の中国経済の発展を受けて、鉄鉱石などの最大の輸出国は日本から中国へシフト。日本語学習者が人口当たり世界一だったのが嘘のように、第2外国語は中国語選択者が増えるなど、中国依存が高まっています。

中国経済がいまひとつで…というのは金融の世界でも昨年から頻繁に聞いていて、香港やシンガポールなどでは、年収2000万クラスの採用がぷっつり途絶えています。今回取り上げたChina Dailyの記事も、採用手控えというよろしくないニュースでした。

中国はなんといっても日本の10倍の人口のいる大国ですから、調子を取り戻してもらわないと世界経済に影響が出ます。失業とのバランスを見ながら政府が供給を絞っているようなのでいずれ回復するとは思いますが、管理経済なので舵取りをうまく取らないと社会不安が高まって大事になります。そしたら日本も対岸の火事では済まなくなるので、中国の景気のニュースには注目しておきましょう。

後半はまた明日書きます。