順天堂大学医学部の予想問題 ― サクセス・ストーリーの解説 5/6
順天堂大学医学部の予想問題は長めだったし、出張中でもあるのでいつ解説を書く時間が見つかるか心配でしたが、だいぶ進みました。予想問題本文はこちらです。
medicpress-harada.hatenablog.com
⑤Mr. Sonko’s story began 34 years ago / ソンコ氏の ストーリーは34年前に始まった
when he left his native Gambia / 彼が故郷のガンビアを出た時に
after falling in love with a Danish woman / デンマーク人女性と恋に落ちたで後で
while on vacation in Denmark. / デンマークでの休暇中に
「休暇中に」という言い方は、on vacationや on leave, on holidayなどいくつかあります。
前にも書いた通り、英語では基本的に最初に言いたいことを言って、そこからどんどん文章を修飾して長くしていきます。上の文もそうで、日本語の順番で行くと
・まずデンマークで休暇を過ごした
・そこでデンマーク人の女性と恋した
・それが34年前で、そこからストーリーが始まった
という時系列になりますが、英語ではまったく逆なことに注目してください。
速読のためには読んだ段階からじゃんじゃん理解する必要があり、こういう英語流の読み方に慣れないといけません。
下線部は問1(3)として出題していました。
(3) The phrase which best suits for the blank in paragraph ⑤ is .
- ashes-to-ashes 葬儀で使う表現「灰は灰に」」
- anti-Danish government 反デンマーク政府
- dishes-to-riches 皿洗いから富裕層に
- unlikely success 考えづらい成功
正解は選択肢3のdishes-to-richesです。dishとrichが韻を踏むことで、文章の格調を上げています。
選択肢4のunlikely successでもよさそうに見えますが、非常に成功の確率が低い中での成功という意味で使う場合は、rare successといいます。unlikely successとは言わないので誤りです。
レアメタルというと、めったにない希少金属を指します。ここでいうレアがrareです。これは需要に対し、南アフリカやオーストラリアなどに原産地が限られているから、ただのメタルではなくレアメタルと言っているのですね。ちなみに貴金属は「大切な」という形容詞preciousを使って、precious metalといいます。
★After moving there, / デンマークへ移住後、
he worked as a fishmonger and a butcher, / 彼は魚屋や肉屋として働いた。
and in a window and door factory. / 窓やドアを作る工場でも
ガンビアで農民だったソンコさんは、デンマークでの休暇中に奥さんと出会い、12人もの子供を授かりました。移住してからは、慣れない環境の中で色々と肉体労働をしていたようです。ノマに皿洗いとして勤務し始めたのは14年前(ソンコさん48歳の時)とありましたから、それまで20年ほど仕事を転々としていたのですね。
この第5段落と第6段落の間に、すっぽり1段落抜けています。この問2に関しては、以前こちらで解説しました。
medicpress-harada.hatenablog.com
脱落していたこの段落は、この記事の中でおそらく一番難解な文章です。ちょっと丁寧に見てみましょう。
★Mr. Sonko’s ascent from immigrant dishwasher to restaurant owner comes at a time / 移民の皿洗いからレストラン・オーナーへというソンコ氏の立身出世は、~と時を同じくして起きた。
when Denmark has been immersed in a culture war / デンマークが文化の闘いに沈んでいる中で
over Danish identity / デンマーク人らしさという点に関連した
amid a simmering anti-immigrant backlash / 反移民感情がふつふつと湧き上がる中、
fueled, in part, by the success of the far-right Danish People’s Party./ (そうした感情は)極右政党、デンマーク人民党成功によって強まった面が一部あるのだが
ascentは反義語descentと一緒に覚えましょう。ascentが上昇、descentが下降です。この最初の部分で出るcomesが、この長い文章の主文の動詞です。ソンコさんは大成功していますから、ascentを立身出世と訳しました。
immerse in ~は「~に浸す」「~に沈める」という動詞で、ここでは受動態immersed inになっています。simmerは「弱火で煮る」という意味ですが、ingをつけて形容詞っぽく使うと「~がくすぶっている(状態)」という意味となります。backlashは名詞で「反動」という意味です。
いずれも書けなくて良いですが、意味は知っておくと便利ですので、weblioで例文を見ておいてください。
この文に出ている単語は少し難易度が高めだったのですが、順天堂大学医学部の予想問題ということで、あえて語句の解説は出題時にはつけませんでした。知らない単語を、なんとなくでもいいので意味を予想しながら乗り越えないと合格できないレベルの大学だからです。
脱落していた段落にデンマークの反移民感情の話が出ていて、そこから話題が移民差別になるのですね。ソンコさんの共同経営者就任という心温まるニュースと裏腹に、デンマーク国内では同じ週に不穏な動きが出ていたようです。
ポーランドからの出張から戻る飛行機の中で、コツコツとこの解説を書きました。ロンドンに帰った地点で午前1時ですから、もう寝ます。
明日はこの解説の最終回です!