昭和大学医学部の予想問題 ─ アート系記事の解説 4/5
ゴッホの絵画強奪&奪還に関する記事の解説は、あと2回です。予想問題本文はこちらです。
medicpress-harada.hatenablog.com
★Prices for van Gogh landscape paintings at auction / ゴッホによる風景画のオークション価格は
range from about $10 million to about $70 million. / 1000万ドルから7000万ドルの間である。
ちょっと動詞が分かりづらいですが、実はrangeが述語です。同じ綴りで名詞扱いだと「幅」という意味ですが、動詞になると「XからYの幅を持つ」という意味になります。Pricesという主語が複数形ですから、この動詞rangeも原型のままです。rangeを動詞で使う場合は、ほぼ間違いなくfromとセットで出るのでそれが目印です。
sea+scapeで海の風景画という意味でした。これよりも一般の風景画を指すland+scape=landscapeの方がよく見かける単語です。
★But Mr. Durham did not know the historical background of the paintings. / しかしダーハムは、盗んだ絵の歴史的背景を知らなかった。
paintingsの前にtheがついていることに注目してください。theは特定の物を指す冠詞ですね。つまりここで言っているのは、一般的な絵やゴッホのほかの作品のことではありません。ダーハムが自分が盗んだ例の2枚の絵について、その背景を知らなかったと言っています。
そのせいか扱いもぞんざいで、ついにはイタリアマフィアに安値で売ってしまうことになるのですが。
★He said /ダーハムは言った。
the paintings were the smallest ones / 盗んだ絵画は、最も小さいものだったと
in the gallery he targeted, / 狙った美術館の中で
and closest to the hole / そして穴に最も近かったと
through which he entered. / 彼はそこを通って入ったのだが
関係代名詞が苦手な人は、ちょっと「えーーー」と思うような文です。まず、He saidの後にthatが省略されています。これはOKでしょう。
難しいのは、次のthrough whichですね。このwhichは何を指しますか?答えは、直前のthe holeです。
He entered the gallery through the hole.という文章が元にあります。そこからthe holeが前に出てしまったので、through the holeのうち残されたthroughに、the holeの代名詞としてのwhichが続くという構文になっています。
たまたま盗んだ絵画がマーケットに出されたことのない特別なものだったのは、単なる偶然だったようです。
★He <B-3> stuffed them into a bag, /ダーハムは絵をバッグに突っ込み、
and escaped by sliding down a rope /ロープを滑り降りて逃亡した。
he and his accomplice had put in place. これは、共犯と一緒に用意しておいたものなのだが
この文章も、he and his accomplice had put in placeの前にwhichが省略されています。しかもこの文章は、動詞がhad + putの過去分詞形となっており大過去です。
順を追って見てみましょう。Before entering the gallery, he and his accomplice put a rope in place for escaping.というのが元の文です。ここでは普通の過去形ですね。
ただし、この準備の後でさらに強盗を働き、そこからまた現在へと時間がたっています。つまり現在から見ると、
- 強盗を働いたのが過去
- 準備段階として脱出用のロープをかけたのは大過去
という理屈です。
下線部B-3は、問3最後の問題でした。stuffというのは動詞で「突っ込む」という意味です。イギリス英語では「chuck」とも言います。以下の選択肢の中では
- laid
- took
- cut
- put
選択肢4のputが正解です。putそのものは「置く」というのが大元の意味ですが、put A in Bという風にinとセットになると、「AをBに入れる」という意味になります。
ちなみに謹慎中の狩野英孝のギャグ、「スタッフー!」という時のスタッフは、綴りが違います。これは名詞でstaffです。
tookはtakeの過去形で、これは昨日も解説しましたが「取る」というのが元の意味なので、違います。活用はtake – took – takenとA-B-C型で、過去分詞形になると「取られた」転じて「誘拐された」という怖い意味にもなります。
cutの活用はA-A-A型でcut – cut – cut です。これも「切る」「減らす」という意味ですから、違います。ちなみに正解のputも活用はA-A-A型ですね。他にも、母音がuしかない短い動詞では、shut – shut- shut などがA-A-A型で活用します。
問題は選択肢1のlaidです。3つソックリさんがあるため、非常に混同している人が多い動詞です。
- 1つ目はこのlaidの原型、lay。意味は「寝かせる」です。lay – laid – laidとA-B-B型で不規則変化します。
- 2つ目は「寝転がる」という意味の動詞、lie。これは、誰かを寝かせるのではなく「自分が横になる」という意味です。活用はlie – lay – lainとA-B-C型です。特に過去分詞形のlainは、正答率が異様に低いと思われる難問です。「第3レーンを走ります」といった場合のレーンは名詞laneですから、間違えないようにしましょう。
- 3つ目は同じ綴りのlie。これは全く違う意味で「嘘をつく」です。活用はこれが一番まともで、lie – lied – liedと通常のA-B-B型を取ります。ただし語尾がeなのでedをつけるのではなく、dのみで過去形・過去分詞形になります。
★When he hit the ground, / 地面に着いた時、
he came down so hard that / あまりに強く着地したため、
he smashed the seascape, chipping the paint. / 海の風景画をぶつけ、ヒビを入れてしまった。
よくあるso that構文ですね。「so+形容詞だったので、that以下になった」という言い方です。生まれつきの強盗だとか言う割に間抜けなダーハムは、so hardに着地したので、smashed the seascapeという結末となり、せっかくの名画を傷つけたようです。
ちなみにこの2作品、FBIが世界の盗難美術品10選に挙げて捜索していた際は、合わせて3000万ドルと見積もられていたそうです。1ドル110円とすると33億円!
関係代名詞と大過去とlie – lay – lainと、いくつも難しい文法が出ました。基本を理解したところであらためて参考書を読むと、知識として定着しますよ。頑張りましょう。