順天堂大学医学部の予想問題 ― サクセス・ストーリーの解説 6/6
1週間にわたって書いて来た順天堂大学医学部の予想問題は、ようやく最終回です。今日は、第6・7段落目と残った設問の解説をします。
他にも慈恵医大・日大・東邦大など、全部で7つの医学部用に予想問題を作りました。長文読解・文法・会話問題など、難易度も出題形式も各大学に合わせてあります。
medicpress-harada.hatenablog.com
それではまず6段落目の解説から。
第6段落
⑥The latest flash point in a loud debate over immigration occurred this week / 移民をめぐる声高な議論は今週、when以下の時にピークを迎えた。
when the country’s minister of integration, Inger Stojberg, / デンマークのインゲル・ストイベルグ統合大臣が
lashed out at a middle-class family of Syrian refugees, / シリア難民の中間階級の家族に向かって悪口を言った時に。
whom she accused of abusing the Danish benefits system / 大臣は(この難民の家族に対し)デンマークの福祉システムを悪用していると非難し
and called “greedy” in an opinion article in BT, a Danish newspaper./ 「強欲だ」と、デンマーク紙BTでののしったのだ。
この大臣のしたことは、3つの動詞を使って書いてあります。
1つ目のlash out at~は「~に対して悪口を言う」「~に激しく襲いかかる」という物騒なイディオムです。
2つ目のaccuse ofは、accuse A of Bというイディオムで覚えましょう。「AさんがBをしたと責める」という言い方で、ofを答えさせたり動詞Bを動名詞img形にするよう求める問題がよく出ます。
3つ目のcallは普通は「呼ぶ」という意味ですが、call namesというと「悪口を言う」という意味になります。ここでは難民家族を「強欲だ」となじったということですから、「ののしった」という訳にしました。
日本では、シリア問題に関する報道は驚くほど少ないようです。2011年のアラブの春以降シリアでは内戦状態となっており、昨年は40万人以上の市民が戦闘に巻き込まれて亡くなったとされています。特に今週はアサド大統領が市民に毒ガス攻撃をし、子供たちが殺害されるショッキングな映像が流れたため、CNNやBBCはこのニュースばかりでした。プーチンとトランプの代理戦争の様相も呈しており、今後が懸念されます。
こういう状況から故国を捨て、難民として命からがら逃げて来たシリア人の家族に暴言を吐くとは、大臣としての資質に欠けますね。統合相ということですから移民の同化政策担当なのでしょうが、人選を誤っていると思います。
下線部は問1 (4)として出題していました。
(4) The loud debate in Denmark mentioned in paragraph ⑥is between and .
デンマークで移民問題を論争しているのは誰と誰でしょう?という問題です。
- refugees and their families 移民とその家族
- those who believe in the rights of immigrants and those who do not agree 移民の権利を信じる人とそれを否定する人
- Danish government and Syrian government デンマーク政府とシリア政府
- Mr. Sonko and Noma ソンコ氏とノマ
正解は選択肢2です。
私はオーストラリアで大学院を出たので永住権を持っていて、子供たちも現地で生まれました。大学院に行っていた20年前は、ポーリーン・ハンソンという極右の政治家がアジア人差別発言で人気を得ており、人種差別を肌で感じる悲しい出来事もありました。
この妖怪ババアがなんと、トランプやルペンといった右翼勢力の台頭に便乗し、オーストラリアで国会議員に返り咲いています。今は、熱心に中東からの移民反対キャンペーン中。有色人種を叩いて票になるならなんだっていいんだな、きっと。
しかも今回出て来たデンマークのインガが、ポーリーンによく似ています。ポーリーンには娘ばかり4人もいますから、その1人かと思いました。赤毛で暴言壁のあるババア政治家は、皆どことなく似るのでしょうか?
pauline hanson Inger Stolberg - Google Search
第7段落
⑦Two years ago, / 2年前
the Danish government took out advertisements / デンマーク政府は広告を出した。
in the Lebanese news media / レバノンのニュース媒体に
that appeared calculated to discourage migrants from coming. / その広告は、移民に来るなというメッセージを送るよう計算されたものに見えた。
calculateは「計算する」という動詞です。名詞はcalculationです。discourageは「~する意欲を失わせる」という動詞で、対義語は「推奨する」「励ます」という意味のencourageです。
★It has also passed a law / デンマーク政府はまた、以下のような法令を通した。
requiring newly arrived asylum seekers / 新しく来た難民申請者に対してto以下を要求するような
to hand over valuables, / 貴重品を差し出すよう
including jewelry and gold, / 宝石や金属を含む
to help pay for their stay in the country./ 自分たちがデンマークで暮らす費用を負担するよう
いや、だからね、内戦から逃げて来た難民だよ?宝石とか持ってないって。持ってたとしても、命がけで逃げて来た人の唯一の財産を取り上げるわけ?人道的支援っていう概念はないのか?
デンマーク政府の仕打ちが、ユダヤ人から貴金属を奪った上に殺害したナチスの姿とダブるのは、私だけではないと思います。
最後に問3を全部見てみましょう。
問3 文の内容に合うように、質問に対する答えとして最も適したものをそれぞれ選択肢1~4の中から選びなさい。
(1) What is true about this passage?
これは以前に解説しました。正解は選択肢2でしたね。
順天堂大学医学部の予想問題 ― 長文読解問題の解説 2/6 - 息子よ、英語満点なら医学部受験に有利だろ
- Noma is a Michelin-starred popular restaurant famous for their authentic Nordic food.
- Mr. Sonko’s success story is a small piece of heart-warming news whilst Denmark is being covered by anti-migrant sentiment.
- Although succeeded to become a restaurant owner, Mr. Sonko is sorry that he left Gambia.
- Now that he is one of the co-owners of Noma, Mr. Sonko will no longer be washing dishes.
(2) Who put an offending anti-migrant advertisement on Lebanon newspapers?
攻撃的な反移民広告をレバノンの新聞に掲載したのは誰か?と尋ねています。本文ではデンマーク政府が載せたとありますが、担当大臣はインガ・ストイベルですし、実際こいつが広告を出したと別の記事にありました。よって選択肢2が正解です。
- Lebanese government
- Inger Stojberg
- Noma
- Ali Sonko
(3) What is the best title of this passage?
この記事のタイトルは、どれが適切か尋ねています。
- Noma and Their Fantastic Food Woos Patrons ノマのすばらしい食事、客をうならせる
- Danish Anti-Immigrant Sentiment Overclouding Migrant’s Success デンマークの反移民感情、サクセスストーリーに影差す
- Danish Dream for a Gambian Immigrant ガンビア移民のデンマーク・ドリーム
- Noma’s New Co-Owner Is No Stranger to Getting His Hands Dirty ノマの新共同経営者、自ら手を汚すことをいとわず
選択肢1以外はそれっぽいものを用意しましたが、ニューヨーク・タイムズが付けたタイトルは、洗練された選択肢4です。ソンコさんは共同経営者になっても皿洗いを続けるということなので、適切ですね。
私は毎月、イギリス国内外で出張しています。覚悟はしていましたが、人種差別を感じることはやはり時々あります。タクシー運転手がやたら無礼とか、乗車拒否されるとかね。きちんとスーツを着ていても、低所得&低学歴中心の白人至上主義者から見たら、私もただの黄色人種です。
先日も空港の出国審査で、頭に来ることがありました。EUパスポート保持者の列が途切れたので係員に言われてそちらに行ったところ、赤い日本時用パスポートを一目見てそれはそれは嫌な顔をし、「ここはEU専用レーンだ」と投げ返して来たのです。
これには温厚な私もキレました。「あんたのとこの係員に言われて来たんだから、さっさと通せ」と怒鳴り返し、そいつに出国スタンプを押させました。人種差別するしか能がない空港職員よ、日本人がいつもおとなしくヤラれてばっかだと思うな!